Eine Deutschlandreise 2015 ドイツ旅行 (4/5)
1ページ目へ移動 2ページ目へ移動 3ページ目へ移動 ご覧になっているページ 5ページ目へ移動
Inhalt 目次
1 Norddeutschland 北部ドイツ
2 Der Harz ハルツ山地
3 Rheinland ラインラント

4 Umwelt und Architektur 環境と建築
5 Deutsch und Kultur ドイツ語と文化
4 Umwelt und Architektur 環境と建築
4-1 Stadtwerke Wolfhagen ヴォルフハーゲン都市公社 【環境】超省エネの社屋
4-2 GRIMM WELT グリムワールド【建築】環境に配慮した新グリム兄弟博物館
4-3 Bauhaus バウハウス【建築】世界遺産:ガイドツアーに参加し、泊まる
4-4 Umweltbundesamt 連邦環境省【環境】エコロジカルとバリアフリーを追求した手本
4-5 Nachwort あとがき
4-1 Stadtwerke Wolfhagen ヴォルフハーゲン都市公社
【環境】超省エネの社屋
写真4-1-1
ヴォルフハーゲンは、カッセルから西へ約20kmのところにある人口1万3千人の小都市。2002年に建てられた、ここの都市公社の社屋が超省エネ建築とのことで、カッセルへ向かう前に立ち寄って見学しました。
玄関を入ると、受付と大きな展示ホールがあり、受付で許可をもらい撮影しました。
断熱サッシュと外壁モデル
写真4-1-2 断熱サッシュ 写真4-1-3 外壁モデル
左:この建物で使われている樹脂サッシュ+トリプルガラスの建具。う~ん、このサイトにお越しくださる方は、一般の方も多いので、分かりやすく説明すると、例えば長崎の一般的な住宅で、真冬に窓に手を触れると冷たく感じ、結露もします。それだけ断熱性能が低く外の冷たさが室内に伝わってきている証拠です。それを相殺するために暖房器具を使います。
一方、この建具ならドイツの厳冬でも冷たく感じず、日本の一般的な住宅の壁より遙かに断熱性能は高く、もしこの建具を長崎の住宅に設置したら、壁の方が冷たく感じるハズ。温暖な長崎にここまで断熱性能の高い建具が必要だとは思いませんが、ひとつの指標にはなります。
平成元年に建てた我が家はアルミサッシュ+ペアガラス。ただアルミは熱を伝えやすいので、長崎でも熱を伝えにくい樹脂サッシュ+ペアガラス程度は欲しいところですが、私が建てた当時、樹脂サッシはまだまた一般的ではありませんでした。当時としては高水準の省エネ住宅を建てましたが、賃貸だと今でもアルミサッシュ+シングルガラスが一般的。
右:この建物で使われている外壁のモデル。全幅で45cmほどあります。左側が外部、右側が室内と見立ててください。右から内壁ボード+断熱材厚20cm+外壁ボード、更に白い断熱材があります。
長崎だとせいぜい内壁ボード+断熱材厚10cm+外壁ボードの合計およそ15cmなので3倍!日本の戸建住宅はまだ省エネ性能が義務化されていないので、10cm厚の断熱材すら入っていない家が多くあります。では、白い部分を見てみましょう。
写真4-1-4 説明文 写真4-1-5 外壁モデル
説明文と外壁モデルを見比べて考察してみます。
1.断熱材厚200mm
2.ラス下地(金網)
3.均しモルタル
4.プラスター下塗り
5.軽量プラスター掻き落とし 3mm(これが一番手前、外気側)
日本なら1を施工した後、2~5は左官による現場施工になるのでコストも時間もかかります。この外壁モデルは1~5がセットになったispotherm WDV-System Cという工業製品らしい。これなら既存の外壁にも設置しやすいので、断熱改修にも向きそう。この断熱厚とトリプルガラスの断熱建具なら、ドイツの現行の2012年省エネ基準EnEV2012に照らして、細かいデータは分かりませんが、十分にクリアーできそう。建具にしろ外壁にしろ、13年前にこれだけのレベルの施工をしているとは先進的。
●全熱交換器+加熱
写真4-1-6 講習室の換気装置 写真4-1-7 事務所の換気装置
左:Lüftungsgerät Schulung(講習室の換気装置)
右:Lüftungsgerät Büro(事務所の換気装置)
一般的にこれらの装置は、機械室や天井裏など設置しますが、ここでは玄関ホールにむき出しにて、展示モデルとなっています。左の装置の前に置かれている説明パネルを見てみましょう。
写真4-1-8 換気装置の説明パネル
これも分かりやすく説明すると、室内の空気を清浄に保つため換気扇を回すと、暖房時だとせっかく温めた空気も排気されてしまい、暖房機を余計に稼働させることで省エネルギーに反します。それで排気する空気と吸気する空気の熱エネルギーを交換する装置を「全熱交換器(日本の代表的な商品名:三菱ロスナイ)」といいます。それでもロスが生まれます。例えば室温20度、外気温0度とすると、通常の換気なら0度の空気が室内へ入ってきます。それが熱交換率によりますが、ここでは熱交換器を通すことで10度になっているとしましょう。負荷は下がるとはいえ、やはり10度から20度へ加熱する装置、つまり暖房機がいります。
日本だとこの程度の事務所ビルであれば、全熱交換機と暖房機は別々に設置しますが、これは両方を兼ね備えた装置のようです。
すなわち、Lüftungsgerätを直訳すると「換気装置」ですが、システムからすると、全熱交換器とヒートポンプエアコンが合体した装置のようです。
全熱交換機もヒートポンプエアコンも、今はもっと効率が高くなっていますが、2002年当時は最先端だったはず。機械装置に関しては日本も負けてはいませんが、外壁・建具の断熱を含めたトータルコーディネートには、さすがにドイツの底力を感じます。
4-2 GRIMM WELT グリムワールド
【建築】環境に配慮した新グリム兄弟博物館
カッセルのグリム兄弟博物館へ行ったら、閉館でがっくり。
近くのワインベルクに新博物館となるグリムワールドが2015年9月4日の開館を目指して建設中。そして閉館した旧博物館では、そのグリムワールドの建設現場を紹介する展示が行われていましたので、その一部を紹介します。
右はその旧博物館の入口に貼ってあったポスター。上半分の写真が新しいグリムワールド。
写真4-2-1 グリムワールドのポスター
写真4-2-2 グリムワールドが建つワインベルクの丘の模型
説明書きによれば、これは建築設計競技でアーヘンのカダヴィットフェルド建築事務所が出した模型。小高いワインベルクの丘の地形になじむような階段状の造形で、屋上からはカッセル南部の市街地やカールスアウエ公園など素晴らしい眺望が楽しめるとのこと。最終的にこの案が採用されたようです。
私が今いる旧博物館は、この模型の右側から外れたところ。建設中のグリムワールドは左手の丘の上、巨大な折返しスロープのような、光が当たっている所です。
写真4-2-3 外壁に使われている石 写真4-2-4 断熱材
左:説明板によると、建物外壁に使われている石。ワインベルクの丘を下から眺めると、擁壁などに地元産の石灰岩(Gauinger Travertin ガウインゲン[地名]のトラバーチン)が使われており、景観の統一性を保つため建物の外壁も同じ素材で仕上げる計画とのこと。ガウインゲンのトラバーチンは、明るく多孔質で耐候性があるそうです。
トラバーチンは古代ローマの建築、例えばコロッセオなどで大量に使われているため、一般にイメージしやすい素材でしょう。どんな建物になるかワクワクします。
右:この断熱材の見本には次のように書かれています。2009年省エネ基準(EnEV2009)によれば、この建物は125.6KWh/㎡・a(暖房・給湯・換気・家電などの全エネルギー合計が、建物1㎡当たり年間125.6KWh)を下回るようにすべきところ、それを大幅に下回る84KWh/㎡・aを実現しているとのこと。
これは、2012年省エネ基準EnEV2012をも下回り、パッシブハウスに近いレベルのようなので、できあがった建物を見たいものです。
写真4-2-5 工事現場の看板
建設地のワインベルクの丘にあった工事関係者の看板。右半分は、工種毎(例えば、設備、外構)など協力業者のリスト。日本の建設現場も多くの協力業者に支えられていますが、日本の協力業者はどちらかというと黒子に徹するため、このように表だった掲示はほとんどしません。でもハリウッド映画のエンドロールみたいに、本来はこのように協力業者に敬意を表して掲示すべきでしょうね。
写真4-2-6 デザイン重視のフェンス 写真4-2-7 デザイン重視のフェンス
左:宿への帰り道、Walter-Hecker-Schuleという職業学校のそばを通りました。ここの鋼製フェンスのデザインには驚きました。手前の建物とその奥のフェンスの面(つら)が一直線に揃っています。
右:近づいてみると、日本なら鋼製フェンスをコンクリート造基礎の上に乗せるところ、基礎の側面に添えるように取り付けてあり、これですっきり見えるわけです。コストも手間も日本の一般的な作りよりかかりそう。
4-3 Bauhaus バウハウス
【建築】世界遺産:ガイドツアーに参加し、泊まる
昨年の旅行で、バウハウスを「現地踏査」しましたが、心残りが多くて(2014ドイツ旅行4/5>4-8-4バウハウスこぼれ話)、リベンジです。今年はガイドツアーに参加し、泊まって、世界遺産バウハウスを深く観察します。
ガイドツアーは次の三つがあり、全てに参加
しました。
・バウハウス本校舎
・教授用住宅群マイスター・ハウス
・実験住宅群テルテン・ジードルング
そしてガイドツアーの後、本校舎のアトリエ棟に宿泊します。なお、バウハウスの概要は2014ドイツ旅行4/5>4-6バウハウスをご覧ください。
●マイスター・ハウス
写真4-3-1 Meisterhäuser Walter Gropius 1925/26年
まずマイスター・ハウスのガイドツアーに参加。ガイドツアーはドイツ語だけ。写真中央の紺色の上下を着た男性がガイド。参加者からの質問にも、よどみなくポンポンと答えていました。
バルコニーは船のデッキをイメージしたとのこと。現代のデザイナーズ住宅の原型でしょう。なお、マイスター・ハウスは、ガイドツアーに参加しなくても、一般の入場券で全部見ることができます。
写真4-3-2 パンフレット
バウハウスは、例えばケルン大聖堂のようにだれが見ても凄いと思える観光地と異なり、一見するとありきたりな現代建築なので、訪れる人は私のように建築を仕事にしていたり、現代建築に興味がある人が中心です。だから説明は専門的だし、参加者も盛んに質問をしていました。
私の準備不足で、ガイドの話しはほとんど聞き取れなかったので、撮影してきた写真と、買ってきたり、もらったパンフレット(全てドイツ語)などを参照しながら、訪れた当日を振り返ります。
写真4-3-3 自転車止め 写真4-3-4
左:エントランスにあった自転車の車止め。
右:色使いは、原色の赤、黄、青、黒、白。
写真4-3-5 生活様式もモダン化 写真4-3-6 松林が眺められるバスルーム
左:バウハウスの先進性は、建物だけでなく食器、そして奥に見えている食卓セットなどの家具も製作し、ここに住んだ講師陣はそれらを使った生活様式をもモダン化したこと。現代生活の起源がここにあります。
右:隣接する松林が眺められるバスルーム。バスタブの水栓はオリジナルではないとのこと。設備の耐用年数は短いので仕方ないでしょう。
●本校舎
写真4-3-7 Bauhaus Walter Gropius 1925/26年
大きな窓が連なる本校舎の北面。100年近く前に造られた建物とは信じられない、溜息が出るほど美しいデザイン。今でも色あせないグッドデザインだと思います。ただ建築技術者として見ると、不合理なんです。北向きに大きな窓をもうけると温熱環境上不利。かみくだいて言うと、北風吹きすさぶ面に熱損失の大きなシングルガラスの開口部だと、寒くて暖房費が嵩みます。一方利点として、「縁側」的なひなたぼっこが不要なら、北向きは日射が四季を通じて一定な反射光だけなので、事務室向きではあります。大きな開口部は気分も爽快でしょう。本校舎は表裏が無い、つまり東西南北どこから眺めても絵になります。長所、短所を分かった上で、あえて挑戦したからこそ、世界遺産たるゆえんでしょう。
では本校舎のガイドツアーに参加します。ガイドは女性でした。なお本館は、ガイドツアーのみ見学できる場所が多くあります。
写真4-3-8 大講堂 写真4-3-9 メンザ
左:大講堂Aula。当時ここで、コンサート、劇、集会などが行われたとのこと。正面の黒いスクリーンを開けるとメンザ(学生食堂)とつながり、一つの大きな空間になります。大学の大講義室の原型でしょうか。
右:メンザ。テーブル、椅子(Hocker B9)はバウハウスの教官マルセル・ブロイヤー、弱冠23才の作品とのこと。このメンザは月曜~土曜の10時~16時に一般に開放されていて、食事を取れるようです。
構成の巧みさ、古さを感じさせないデザイン、ひとつひとつのこだわり、つまりつぎ込まれたエネルギー、天性のセンスに段違いのレベルを感じます。
写真4-3-10 原色使いのドア 写真4-3-11 カーテンウォール
左:メンザから階段室に出てくると、原色使いのドアがありました。
右:ガラス・カーテンウォール。右手にあるハンドル一つで全ての通気窓が開くようになっており、当時としては画期的だったらしい。
この後、アトリエ棟(学生寮)、Gropiuszimmer(グロピウスの部屋、校長室)を見学して本校舎の見学を終了。テルテン・ジードルングへ向かいました。
ただこのページでは本校舎を紹介した流れで、先に泊まった部屋を紹介します。
●本校舎のアトリエ棟(学生寮)に泊まる
写真4-3-12 Ateliergebäude im Bauhaus Walter Gropius 1925/26年
1.予約は、バウハウスにメールでドイツ語で宿泊希望日に空きがあるかどうか問い合わせます。
部屋の種類は、シングルかツインか、修復済みかまだか。
2,めでたく空きがあれば、返信メールに添付されている予約確認書をプリントアウトして持参します。
3,バウハウスに到着したら、地下階のカフェテリアで予約確認書を示して部屋の鍵を受け取り、室料を現金で払います(カード払い不可)。シングル・修復済み素泊まり45ユーロ(約6,100円)でした。
・赤丸がアトリエ棟の泊まった部屋。エレベーターはありません。
宿泊問い合わせは英語でも可能ですが、ネット検索したら、「英語で問い合わせたら全く相手にしてもらえず泊まれなかった。」というブログ(※、日本語)もあるので、ドイツ語での問い合わせが無難かな。
写真4-3-13 アトリエ棟入口 写真4-3-14 アトリエ棟4階
左:外灯が点灯しているところが、アトリエ棟の入口。
右:アトリエ棟4階の平面図。右上の配置図の緑丸部分です。各階に6部屋あるようです。
①泊まった部屋②共用のシャワー室(右隣が共用便所)、③共用のミニキッチン
写真4-3-15 部屋 写真4-3-16 部屋
泊まった部屋。部屋の大きさ、仕上げをメモった紙を紛失してしまいました。覚えている限りだと、床はモルタル、壁、天井はモルタルの塗装仕上げ、と至ってシンプル。広さは少なくとも20㎡(12帖)、天井高は2.7m程度で、ガランとした大きな部屋でした。
TV、インターネットはありません。インターネットは、地下階のカフェテリアで1時間1ユーロの無線LANが使えます。洗面台は室内にあり、ハンドタオルとバスタオルは置いてありました。各部屋には1m角程度のバルコニーが付いていますが、手すりが低いので安全のためでしょうか、鍵がかかって出られないようになっていました。
パンフによれば、高さ2.22mのドアが2mになり、金具、配管、電気錠、暖房放熱器、作り付け家具などが当時と異なる一方、机・椅子・照明器具、ベットカヴァーは当時デザインされたものが設置されています。
写真4-3-17 シャワー室 写真4-3-18 洗面所
各階にある共用のシャワー室と洗面所。ステンレスの仕切りの両面にシャワー設備と洗面台があります。まだ新しかったので、更新されたものでしょう。ひんやりと広すぎるシャワー室なので、はだかになることに気が引けます。
写真4-3-19 中廊下 写真4-3-20 ミニキッチン
左:中廊下
右:中廊下の突き当たりにあるミニキッチン。このキッチンは明らかに現代版です。冷蔵庫もあります。
キッチンの先のドアからバルコニーへ出られたので、記念撮影。この階にはもう一人泊まっている気配がしましたが、共用部分ではち合わせすることは無かったです。
写真4-3-21 バルコニーから見る本校舎 写真4-3-22 バルコニーから見る本校舎
バルコニーへ出ると、地上から眺める視界とまた違った光景が新鮮。
それでは時間を逆戻りして、ガイドツアーに戻ります。本校舎のガイドツアーが長引いてしまい、終了を待たずに、南へおよそ5kmのテルテン・ジードルングへ車を走らせました。
●バウハウス本校舎からテルテン・ジードルングへの行き方
私は車で5分ほどで移動しましたが、公共交通機関を使うなら、一般的には中央駅前まで約1kmを歩き(12~3分)、そこから1号線の路面電車に乗ってDamaschkestr.ダマシュケ通りまで乗車時間20分。そこから350m歩きます(約4~5分)。路面電車は平日日中15分間隔、週末日中30分間隔。つまり本校舎からテルテン・ジードルングまでの所要時間は待ち時間も含めると、平日でも1時間は必要。路面電車といいながら、日本のように頻繁運転ではないので、事前にダイヤを調べておくと時間が無駄にならないと思います。
●テルテン・ジードルング
昨年はここを訪れなかったので、初めての訪問です。
パンフによれば、1926年から31年にかけて、「光、空気、太陽」を主題とする労働者向けテラスハウス314戸を建設。1戸当たり敷地面積350㎡から400㎡、建物の床面積57㎡から75㎡。つまり広い庭を持つ、当時の新興住宅地でしょう。
写真4-3-23 Konsumgebäude Walter Gropius 1928年
写真4-3-24 ガイドツアー
地区のほぼ中心にある、かつての日用品販売店「生活共同組合ビル」がインフォメーション・センターになっています。
ガイドツアーの集合場所もここ。私がここに着いたとき、参加者は誰もいませんでした。「ど、どうしよう~」と困惑していたら、建築設計事務所の経営者風の中年ドイツ男性が、私のように車で駆けつけたので、ホットしました。女性ガイドは恐らく60代。ドイツ語の説明はほとんど聞き取れないので、二人には「お気遣いは不要です。」と告げて、二人の後について見学しました。
右写真の右側がガイド、左側が今回のガイドツアーで唯一のまともな参加男性。
なおテルテン・ジードルングもガイドツアーでみ見学できる場所が多くあります。
写真4-3-25 く体 写真4-3-26 暖房装置
これから4枚はインフォメーション・センターの展示物。
左:説明文によると、建物の構造体の空中コンクリートブロック。第二次世界大戦の戦禍で壊れた建物のもので、壊れた建物は同様のブロックで再建されたらしい。重さ32kg、職人2名で1日当たり250個を積みあげたとのこと。
かなり重たいですね。日本で使う一般的なコンクリートブロックの重さは、厚さ19cmで通常18kg程度なのでその2倍程度あります。
右:暖房装置。説明文によると、右手前がボイラー、左側がラジエーター(放熱器)。ボイラーは、通常地下室に設置しますが、ボイラー自体が放熱体なので、室内に設置できると書いてあります。燃料は、ドイツに豊富な褐炭、石炭などが使えるようです。
写真4-3-27 乾式トイレ 写真4-3-28 水回り
左:乾式トイレ 排泄物は堆肥にして、家庭菜園で使う計画。
右:タイル造のバスタブ、ガスコンロ、流し台などが一体で作り付けられた水回り。バスタブには木製の折りたたみフタがあり、調理台としても使ったとのこと。二期工事では、水の使用量を減らすため、バスタブを小さくしたとあります。
写真4-3-29 Laubenganghaus Hannes Meyer 1930
世界で最初の片廊下型アパート。公団住宅の原型ですね。
48平米の低所得者向けアパートが、そのままの形で今も存在することは、成功の証。設計したハネス・マイヤーは「Volksbedarf statt Luxusbedarf(贅沢品ではなく必需品だ)」という言葉を残しているそうです。
確かに昭和5年の生活水準だと、この建物は「贅沢品」だと思われたことでしょう。逆に言えば、先進的な建物だからこそ今まで残ったと言えます。
写真4-3-30 写真4-3-31
左:とても80年以上経った建物とは思えないほど、維持管理が行き届いています。
右:室内に入ると写真4-3-26 暖房装置がありました。なお内部はガイドツアーでしか見ることができません。
「必需品を超えた贅沢品」とは言え、二代目学長だったハネス・マイヤーが住んだマイスター・ハウスとは雲泥の差。
写真4-3-32 Stahlhaus Georg Muche und Richard Paulick 1926-27年
鉄の家。鉄骨造プレハブ住宅の元祖でしょう。コストなどの問題があって、当時普及には至らなかったようです。
なおここの内部もガイドツアーでしか見ることができません。
写真4-3-33 テラスハウスが建ち並ぶ通り
「Doppelreihe二列」と名の付いた通りに並ぶ、1926~27に建てられた二階建てテラスハウス
余談ですが、写真4-3-29片廊下型アパートを見学したときは晴天。そのわずか50分後はこのとおり。スコールのような通り雨の後です。
写真4-3-34 写真4-3-35
Haus Antonアントン・ハウス 1926
パンフなどによると、低コストで造ったため、多くの住居は居住環境の改善のため手が入っているものの、このアントンさんが住んだ住居は乾式トイレ、タイル一体造の設備、窓、ドアなど80年以上オリジナルのまま使われてきたらしい。2012年からガイドツアーで一般公開されています。
この後、スタート地点のインフォメーションセンターへ。15時半からスタートしたガイドツアーは1時間半におよび、17時に終了しました。ガイドツアーの内容は、ほとんど聞き取れませんでしたが、このガイドツアーでしか立ち入れない場所を多く回れたので満足です。参加の男性は盛んに質問していたので、専門的な話しのキャッチボールは楽しそうで、ガイドの説明も長くなったみたい。
この後、本校舎へ車で戻り、3本のガイドツアーは終了しました。
4-4 Umweltbundesamt 連邦環境省
【環境】エコロジカルとバリアフリーを追求した手本
写真4-4-1 正面玄関
写真4-4-2
デッサウでは、バウハウスの他に、連邦環境省の本部ビルを見学するというもう一つの目的があり、公式サイト(※、独語)によれば執務は9時から。但し午前6時から建物内に入って見学できるとあったので、次の目的地ヴィルマールへ向かう前に、早朝から行きました。なお、前日の夕方に下見に行った際に撮影した西日が当たる写真もあります。ご了承ください。
建物は、鉄筋コンクリート・鉄骨造4階建延39,800㎡、2005年竣工、設計ザウアーブルッフ・ハットン。
右は正面玄関を示す案内板。下の自由曲線など黒い図形が建物。
次に紹介するパンフレットには、この建物の四つのテーマが書かれています。
1.Erfüllung hoher ökologischer und energetischer Anforderungen an Bau und Betrieb. 建設と運用における高い省エネルギー性
2.hohe Wirtschaftlichkeit 低コスト
3.behindertengerechte Gestaltung バリアフリー
4.optimale integration in den städtebaulichen Kontext 都市景観との高い親和性
写真4-4-3 写真4-4-4
左:頂いたパンフレットは次の6種類。
●Wer Wir sind. Was Wir tun. 職員と業務内容
●Die Landschaftsarchitektur 造園
●Das energetische Konzept im Dienstgebäude 庁舎のエネルギー・コンセプト
●Die architektur des Gebäudes 建物の建築的特徴
●Das Umveltbundesamt in Dessau 連邦環境省(一般的な案内)
●The geothermal heat exchanger 地中熱交換システム(英語版)
これらのパンフレットや、ネットの情報などから書き出してみます。
右:造園のパンフレットにあった配置図。上の写真4-4-2を左へ90度倒した図形。主棟はガラス屋根のアトリウム(ガラスやアクリルパネルなど光を通す材料で覆われた大規模な空間)を取り囲むようにうねっています。中央右手にはHörsaal講堂を取り囲むようにForum(フォーラム[オープンスペース])があります。
主棟の右側には図書館。右端にはもともとこの場所にあったベルリッツ駅の旧駅舎が残されています。
手前(写真下方向)には別棟の平家建てKantineカフェテリア。その周囲は、緑地帯です。
写真4-4-5 カフェテリア
上:カフェテリアのそばには広々としたビオトープ。右手が主棟。
カフェテリアは厨房と食堂で構成されており、厨房は西側にある道路の騒音を防ぐように建ち、食堂は天井まで届くガラス窓が半円形に取り囲み、明るく開放的。
右:食堂に林立する細い鉄骨柱は人工林をイメージしたとのこと。
写真4-4-6 カフェテリア
写真4-4-7 市街地側は暖色 写真4-4-8
裏手に回ると駐車場があり、主棟は「角」がなくうねるように延びています。またこれだけ長いと、単調になりがちな外壁は、7色に彩られとてもカラフル。こちら市街地と向き合う面は暖色系にしたとのこと。
写真4-4-9 正面玄関側は緑基調 写真4-4-10 無塗装の外壁板
左:正面玄関側は植栽・ビオトープと協調する緑基調。透明な窓の間は、シルクスクリーンのガラス壁。透明な窓は内側に30cmセットバックされており、窓枠には個々の部屋を換気する換気口があるとのこと。
右:外壁の腰部分には、(防腐処理をしていない無塗装の)カラマツの横羽目子割板。自然な風化を許容する設計らしい。
写真4-4-11 フォーラム
フォーラムに入ってきました。ここもガラス屋根で覆われ、実質的には「アトリウム」です。左手の丸い白壁は鉄筋コンクリート造の講堂。
省エネルギー性能は、計画当時の1997年省エネ基準(WSchVO1997)よりも50%低く、2005年竣工当時の2005省エネ基準(EnEV2005)よりも30%低く、パッシブハウスの2倍程度とのこと。
写真4-4-12 写真4-4-13
フォーラムには「Fotografische Narrative entlang des Nils 写真によるナイル川物語」が展示してあります。読むかぎり、環境問題を提起するというより、ナイル川に生きる人々をありのままに紹介しているようです。
写真4-4-14 環境汚染の展示 写真4-4-15 アトリウム
左:環境問題と言うと、かつてドイツや日本では公害が主要なテーマであった時期があります。ここにも洗剤などによる河川の水質汚染があったことを展示してありました。
右:フォーラムの奥にはアトリウムがあり、3本の橋が左右を繋いでいます。
早朝だからか、クモのような足を持つクレーン車が作業中でした。
4-5 Nachwort あとがき
●建物の維持管理にはお金がかかる
写真4-5-1 維持管理不良の老朽家屋
これはオスターヴィーク(2015ドイツ旅行2/5>2-1 オスターヴィーク)で見かけた老朽家屋。大きく立派な建物ですが、残念ながら外壁は波打ち、窓ガラスは割れ、屋根瓦は不揃い。恐らくこの状態なら小屋組は雨漏れで破損し、老朽化は加速度的でしょう。この地に限らず、旧東ドイツエリアを旅行しているとこのように維持管理されていない家屋を多く見かけます。
観光開発が進み、観光客がお金を落とすところなら、それなりに修復費用の捻出に余力があるのでしょうが、過疎地だと全てには手が回らない印象です。中世都市を観光して回ると、ロマンチックな街並みが魅力的です。その背後には人々の多大な努力があることを感じます。
写真4-5-2 修復中の建物
こちらはヴィスマール(2015ドイツ旅行1/5>1-8 ヴィスマール)のマルクト広場に建つ建物。世界遺産の町の中心部だからか、こちらはEUのマークが架かっていることが示すように、各種補助金で修復が行われていました。
3ページ目へ戻る 1ページ目へ移動 2ページ目へ移動 3ページ目へ移動 ご覧になっているページ 5ページ目へ移動 5ページ目へ進む
3.Rhein
-land
1.Nord 2.Herz 3.Rhein
-land
4.Umwelt
& Arch.
5.Deutsch
& Kultur
5.Deutsch
& Kultur
 


Copyright(C)2015 Hiro Kofuku All rights reserved