Eine Deutschlandreise 2016 ドイツ旅行 (4/4)
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Inhalt 目次
1 Sachsen ザクセン
2 Der Harz ハルツ山地
3 Am Rhein ライン河畔

4 Architektur 建築
4 Architektur 建築
4-1 Grüne Zitadelle 緑の砦 泊まれる芸術作品
4-2 Fagus-Werk Alfeld ファグス靴型工場 【世界遺産】モダニズム建築の先駆け
4-3 Nachwort あとがき
4-1 Grüne Zitadelle 緑の砦
泊まれる芸術作品。建築として実現させた情熱に感銘
概要は
●2015ドイツ旅行(1/5)>1-5 マクデブルク
●2016ドイツ旅行(2/4)>2-4 緑の砦
をご覧ください。
写真4-1-1 電車通りからの外観
マクデブルクの旧市街Domplatzドームプラッツ(大聖堂広場)の直ぐそばにあります。Wiki.deによれば、歴史的景観地区に建てることに議論があったとの。よく実現できたものです。
屋上一面が緑化されており、航空写真で見ると、本当に「緑の砦」のように見えます。敷地は4面とも道路に面しており、建物の周りをぐるりと1周できます。
これだけボリュームがある建物を、ガラス張りのファッサードなど最新の建築様式で作ると、配慮が足りないと無味乾燥なデザインになってしまう場合もありますが、この建物は生き物のようで、近づきたくなる親近感が湧きます。
写真4-1-2 中庭 (2015年春撮影)
写真4-1-3 中庭
建物はレンコンの穴のように中庭Hofが二つあり、路面店が並んでいます。建物造形は、色も形も独特。土間は波打ち、窓の形、大きさはバラバラ。芸術家が一人で彫塑を作るのであれば、マイペースで構わないでしょうが、芸術家の構想を協働で形にする。そこには建築技術者の「常識」は通じないことでしょう。よくこれだけ巨大な芸術作品を、建築に落とし込んで形にしたものだと感銘を受けます。
外壁の縦のえび茶色の線が、私には木の幹のようにみえます。
右:ホテルの客室は2階レベルにあり、ちょうど私が泊まった部屋が正面。それではホテルに入ってみましょう。
 
写真4-1-4 ホテル・ロビー 写真4-1-5 ホテル・フロント
ホテルの玄関・ロビー(左写真)、フロント(右写真)は1階にあり24時間対応。この2枚は泊まった翌朝夜明け前の午前5時頃に撮影したので、幻想的な光でライトアップされています。
フロント奥のドアを抜け、階段を上ると客室です。
写真4-1-6 2階平面図
青丸が泊まった108号室。中庭に面したテラス付きの部屋。
写真4-1-7 階段 写真4-1-8 中廊下
左:階段の造形も芸術家フンデルトヴァッサーの世界観がよく表れています。少し時代を後戻りしたようなデザインでありながら、古臭さを感じさせません。
右:2階の客室に繋がる中廊下。床は端が不規則に傾斜していて、水平部分にだけ青いカーペットが敷き込まれており、川の流れの上を歩いているみたい。そもそもこのようなデザインにしようと考える発想の奇想天外さが、芸術家を芸術家たらしめていると言えます。
写真4-1-9 客室テラス 写真4-1-10 客室テラス
左:客室からテラスに出ました。2階なので人工地盤です。植栽は草原と林のイメージなのか、都心なのに牧歌的な安らぎを感じます。
右:振り返って客室側。軒天にもツタが伸びています。夏になると若葉が茂り、ますます緑に囲まれた空間になることでしょう。ツタの根対策は取られているでしょうが、根がく体を傷めないか、建築技術者としては気になるところです。
全て「角」が取れて丸くなっているので、おとぎの国のお菓子の家みたい。サッシュは四角の工業製品ですが、その回りの枠を同系色で塗ることで、窓も柔らかい印象を受けます。
写真4-1-11 客室 写真4-1-12 客室
都市型ホテルなので、客室はコンパクトな作り。
家具、絵画など調度品も統一したイメージ。ワクワクと心躍る楽しさに溢れています。さすがにTVだけはどうにもならなかったようで、工業製品として目立っています。せめて白枠のTVでもよかったのではとも思いますが、それでも画面は黒なので、黒一色の方がまだましとの判断だったのでしょうか。
写真4-1-13 客室 写真4-1-14 客室
左:テラスに出るステップ。赤丸部分を接写したのが右写真。蹴上げのモルタルの塗りが荒く、何かの拍子に足をこすったり、手を付いたりすると怪我しそうです。このおおらかさがあるからこそ、芸術作品を建築として形にできたのでしょう。
そもそもステップがいらない設計にすればいいし、バリアフリーにもなります。恐らく2階床レベルに盛土のうえ植栽しているので、人工地盤面が上がりステップがいるのでしょう。ステップを解消するには、
・盛土する部分だけ床面を下げる。この場合は、1階店舗の天井が下がるので、採用できないでしょう。
・盛土する厚み分だけ1階の階高を高くする。上の平面図を見ると、テラス付きの客室は数部屋。その限られた客室のために、1フロアー全体の階高をあげることは、経済合理性の面で疑問符が付きます。
このように考えると、いろいろな制約の中で、付加価値を付ける範囲で「ステップは必要になるが、テラスに出られる客室もある。」という判断に至ったとしても無理は無いと思われます。
写真4-1-15 サニタリー 写真4-1-16 サニタリー
サニタリーは、日本で一般的なユニットバスではなく、はたまたドイツでよく見かけるシャワーブースでもなく現場施工。タイル張りは乱張りで手間がかかりそう。
左写真の赤枠部分を拡大したのが右写真。中央は1枚のタイルを3枚にカットしてあります。カット面はカットしたままヤスリ加工されていないので、鋭く尖っています。これこそうっかり手を付くとぐっさり手を切りそう。
先ほどのステップといい、このタイルカットといい、日本ならもう一手間かけないと、完成品として認めてもらえないでしょうから、日本で同じものを作ろうとすると人件費が割り増しになり、建築費はもっとかかることでしょう。
建築技術者の野暮な視点はこのあたりで終わりにして、芸術作品を泊まれるように建築に落とし込んだところに意義があり、芸術家フンデルトヴァッサーのGeist(精神)に触れられ、とても意義深い宿泊体験でした。
4-2 Fagus-Werk Alfeld ファグス靴型工場
写真4-2-1 ①本館北面
【世界遺産】モダニズム建築の先駆け
ハノーファーの南約50kmにあるアルフェルトという人口約2万人の小さな町にこの工場はあります。
バウハウスの創立者ヴァルター・グロピウスと、同氏の工房のアドルフ・マイヤーによって1911年~13年に建てられたモダニズム建築の先駆け。
いろいろな資料によると、創業者ベンシャイトは、それまで主流だった窓が大きく取れないレンガや石造の工場建築と決別してガラス張りの工場を建て、薄暗く劣悪だった労働環境を光に溢れた「労働者の宮殿」に変えたとのこと。まさに建築史においても、産業史においても、時代の変換点となった傑作。
なぜこの地に靴型工場があるかというと、周囲は森が多く、木材の調達が容易らしい。
写真4-2-2 模型
館内に模型があったので、概要から紹介します。こちらのmodellbahnfrokler.de(※、独語)に配置図があったので、参考にさせて頂きました。
この模型は、北側から南側を見ています。道路は南側(写真の奥)にあり[P]駐車場に車を駐めて、本館を目指します。
①本館 Das Hauptgebäude
生産棟を囲むようにL型に建っている鉄骨造管理棟。現在も靴型工場として操業しており、1階が梱包・出荷ヤード。観光客も利用できるカフェがあります。上層階は事務所。
②木材倉庫 Das Holzlagerhaus
ここの施設でもっとも大きな建物で、もとは靴型の材料になる木材をストックしておく木造倉庫。現在ではプラスチック製が多くなったため、遊休施設になっていたらしい。現在はFagus-Gropius-Ausstellungファグス・グロピウス展」の展示棟
③Der Kohlenbunker 石炭貯蔵庫
燃料用石炭の貯蔵や、搬出前のおがくずのストック棟として使われていたらしく、鉄道の引込み線跡とプラットホームが残されています。現在はUNESCO-Besucherzentrumビジター・センターとして使われています。
写真4-2-3 守衛室 写真4-2-4 ①本館南面
左:敷地の入口にある守衛室。100年を過ぎた建物とは思えない、現代に通じるデザインの普遍性と維持管理の良さを感じます。
右:写真左手が駐車場。右手に本館の玄関がみえます。
建物角に柱が無く、カーテンウォールで視界が広がっているのがこの建物の特徴。
写真4-2-5 案内板
駐車場にあった独英併記の案内板。ざざ~と読むと、世界遺産になるまでとこの工場の歴史が書かれています。
写真4-2-6 ①本館北面
写真4-2-2 模型で手前になっている本館の北面。模型でも分かるとおり、道路や駐車場に面し玄関がある南面(写真4-2-4 ①本館南面)より、こちらが正面みたいに端正です。
ウィキペディア(※、日本語)などに興味深いことが書いてありました。
(1)鉄道旅客への視覚効果
(2)創業者ベンシャイトが以前勤めていて、首にされたベーレンスの工場(写真4-2-19で紹介)が線路の反対側にあり、対抗心から宣伝効果を狙った。

なるほど反骨精神からか。理由はどうあれ、エネルギーが歴史に残る建物へ昇華したようです。
それでは③ビジター・センターに立ち寄って、②展示棟へ向かいます。
写真4-2-7 ②展示棟 写真4-2-8 元製材所
左:この棟だけは、グロピウスの前任者エドゥアルト・ヴェルナーEduard Wernerの設計に基づいているので、他の建物とは印象が異なります。
上層階は木造のく体だけが残されていますが、展示資料によるともともとレンガの壁もあったらしく、小さな窓が本館と対照的。ここは木材をストックする倉庫だから、前任者の設計のまま建てられたのでしょう。もしここが、従業員の作業場所であれば、本館と同じように鉄とガラスのファッサードになったかも。
右:展示棟に接続して平家の建物があります。もとは製材所Die Sägereiで、現在は貸事務所らしい。広いヤードがありますが、当時は原木が山積みされていたのではと想像します。
写真4-2-9 ②展示棟内 写真4-2-10 ②展示棟の階段
左:内部は当時の意匠を残したまま、展示のための必要最小限の造作がされています。通風を確保するためか、床板も隙間が空いています。
右:両サイドの階段室は真新しい。もともと倉庫だったので、展示棟として利用するために改修されているもよう。
写真4-2-11 修復工程を記録した写真パネル
この棟の修復工程を記録した写真パネルがありました。左上と中央上は、修復前の様子。外壁が破損するだけでなく、木構造もかなり傷み、建て替えの時期にきている老朽家屋にしか見えません。
左下は修復工事中の様子。傷んだ部材が崩れ落ちる恐れがあり、工事は危険を伴ったらしい。
中央下は外壁を全て取り払い、木構造だけになった様子。恐らく修復工事は、新築費用なみにかかったはず。それでも世界遺産の一部として残そうとした熱意をヒシヒシと感じます。
写真4-2-12 ②展示棟の最上階 写真4-2-13 当時の様子
左:最上階は、越し屋根を頂く小屋組があわらしになっています。通風を確保し、木材の乾燥を促すためでしょう。一般的に洋小屋組はトラスを組みますが、束立てになっているので日本の古民家みたいな印象です。
右:左上は1913年に撮影された倉庫の様子。荒削り生木を1~2年乾燥させたとあります。
写真4-2-14 木材加工品(窓枠) 写真4-2-15 木材加工品(材種)
左:建てない「建築士」なので、こういった木材とその加工品の展示を興味深く見ました。日本でも探せば同様なものを見ることができますが、今回みたいに「ついでに見る」ことができてよかった。
右:日本で木造建物は、主に杉・ヒノキで造りますが、ドイツだとどんな材種を使うのかと興味深く見ました。工場の名称ファグスFagusとはブナ属を言うらしく、この見本ではBuche rot gedämpftと書かれた板がありました。調べてみたところ、蒸気処理したバインダーレスボードというのもありますが、ここでは単に赤いブナの色を蒸気処理で抜くらしい。色目を整えて均質化する狙いがあるようです。
写真4-2-16 模型 写真4-2-17 バウハウスの模型
左:木造く体の模型。実物でこんなに繊細な架構で造られるといいな。構造の専門家ではないので断定できませんが、実物だともっと断面を大きくしないと無理なはずだから、コンセプト・モデルでしょう。または芯に鉄骨を入れて外側を木造で巻くとかして工夫する必要がありそう。
右:【世界遺産】デッサウのバウハウスの模型もありました。こちらもヴァルター・グロピウスが設計し、ファグス靴型工場の10数年後の1925/26年に建築。2014年、2015年と2年続けて訪れて、2年目には泊まったので懐かしい。
写真4-2-18 ②ビジター・センター
順番が逆になりましたが、最初に寄ったビジター・センター。左側が線路。右側に本館が見えています。
写真4-2-19 ②ビジター・センター 写真4-2-20 ②ビジター・センターの改修図
左:プラットホームに来てみました。引き込み線は撤去されています。線路の反対側には、創業者ベンシャイトが以前勤めていて首にされたベーレンスの工場が見えます。
右手の建物はかつてのDie Gleiswaage車両計重台。この小さな建物も本館の意匠を踏襲しています。
右:ビジター・センターに改修したときの図面らしく、図面を見る限り鉄筋コンクリートの壁構造。描き方は万国共通だなと思ったものの、もともと西洋建築は欧米に学んだから、描き方も同様に学んだわけだ。
4-3 Nachwort あとがき
●見たはず
1981年秋から82年春にかけて、私はここアルフェルトから約70km南のゲッティンゲンに滞在していました。当時週末になるとドイツ国内を鉄道旅行していて、ゲッティンゲンから北へ向かうと、ここアルフェルトを通ってハノーファー。恐らく車窓からこの建物を見たことがあったはず。ただ当時は建築を学ぶ学生でありながら意識が低く、ありきたりの現代建築くらいにしか思わなかったことでしょう。それに当時は、ほとんど観光気分で古城とか教会を見て回っていました。
●木による放射線 Parabeln aus Holz
写真4-3-1 ベルリンにあるノルトライン=ヴェストファーレン州代表部
この写真はファグス靴型工場②展示棟にあった、ベルリンにあるノルトライン=ヴェストファーレン州代表部Landesvertretung Nordrhein-Westfalen in Berlinの写真。説明文によれば、
●適切な断熱材
●自然換気の活用
●運用コスト・汚染物質・一次エネルギー消費量の削減
●持続可能な建築材料の使用
これらに木材は重要な役割を果たしている。

とあります。高層ビルや大規模な建物に木材を活用することが、建築のトレンドになっています。設計はPetzinka Pink Architekten, Düsseldorf。
実は2014年フランクフルトのドイツ建築博物館で、カッセル新ギャラリーの写真を見てぜひ実物を訪れたいと決意(2014ドイツ一人旅(3/5)>3-7フランクフルト)。
翌年訪れたという「前歴」があります(2015ドイツ一人旅(1/5)>1-3カッセル)。
この洗練された建物を見てみたい。来年はベルリンかな(笑い)
旅行の後、なかなか旅行記を書き進める余裕が無くて、ここまでたどり着いたのは、2017年のドイツ旅行後の2017年6月。なんとか仕上げないと2017年の旅行記も書けないなと、自分にはっぱをかけました。
●皆様に感謝
2011年からここまで6年連続でドイツへ「帰省」。これもそれも「幸運」としか言いようがありません。家族の健康と理解、職場の理解など、回りの人々に恵まれました。重ね重ね感謝を申し上げます。2017.6.26脱稿。
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