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幸福の家
雨水利用について
 雨水を利用する事は、単に渇水対策だけでなく、防災対策(阪神大震災以降、自主水源の重要性が認識されています)、環境保全(雨水の貯留を雨水の浸透システムと併用し、洪水の防止、地下水の涵養に活かす、またダム建設による大規模な環境破壊の防止)に有効であり、ひいては私たちの身近な環境を守る事につながることになります。それと意外だったのは、節水意識がとても高まると言うことです。即ち、目の前に水があり、その水がどんどんなくなっていくのです。実際には洗濯やお風呂でその4倍程度の上水道を使っているのですから、いかに私たちが大量の水を何気なく使っているか実感できます。私は今回、節水型のドラム式洗濯機や、お風呂の残り湯を洗濯機に送る設備などをつけましたが、それでも残ったお湯は洗顔や掃除、トイレの流し水に使うなど、以前にもまして水を大切に使うようになりました。
「環境にやさしい」と口で言うのは簡単ですが、それはドイツのようにごみを出さない生活スタイルを確立するとか、地域で太陽光発電を導入するなど、なかなか社会全体のコンセンサスが熟成しないと進みません。一方、わたしも車を持っていて大気を汚していて、まだまだ胸を張って言えることではありませんが、すこしでも生き方を変えていきたいものです。
我が家の雨水利用設備
集水面積(屋根面積):約100u 即ち10mm降ると1tの雨水がたまります。

雨水貯留槽:鉄筋コンクリート造有効容量約5t、50mmの雨で満タンになり、雨が降らなくても6週間ほど持ちます。なお、初期雨水は集水面のゴミや土砂、大気中の化学物質が混じるため、降り始めの1mm(約100リットル)は、初期雨水カット用の小タンクを設けて捨てています。雨水タンクが空になったときは、上水道より補給します。なおこの容量で、長崎の過去の降水量を基に、事前にコンピューターでシュミレーションしたところでは、平年程度の雨があると、トイレの雨水利用率は96%、平成6年の渇水時で82%でした。但し、現在のところ、事前の予想よりも使用水量が少ないので、雨水だけでまかなえています。

殺菌設備:無し 雨水は基本的に蒸留水なので意外ときれいです。また、通常の降水量ですとタンクの水はどんどん変わるため問題はありませんし、トイレの流し水として使う程度であれば、雑菌等混じったとしても問題はなさそうです。基本的に低コストでないとペイしないので殺菌は考えておりません。

給水設備:浅井戸用ポンプを設置し、3箇所のトイレと、車庫、テラス、足洗い場へ給水。
計算では年間2000mmの雨が降ると、私の家では200tになります。雨の降り方はばらつきがあるため、有効に貯められるのはこのうち80%の160tと言われています。一方現在はそのうちトイレの流し水として36t(月に3t×12ヶ月)しか使っておらず、もっと有効利用する手だてはないのかな、とも考えています。

雨水利用状況図
網かご 初期雨水カットタンク
網かご

初期雨水カットタンク

車庫内の設備 水位計とドレンコック
車庫内の設備

水位計とドレンコック

ポンプと量水器 雨水タンク点検口
ポンプと量水器

雨水タンク点検口

雨水利用の効果
前の家では、上水道だけで月18t使っていましたが、今の家では、上水道12t、雨水3t、合計で15tという結果になっています。
水の利用状況
Q&A
トイレへの配管
トイレへの配管は、流し水用の雨水とウォシュレット用の上水の2本引いています。
また、「ロータンク手洗い付」便器という、水がたまるタンクの上に蛇口が付いていて、水を流すと蛇口から手洗い水が出るタイプがありますが、この蛇口からは雨水が出ますので、このタイプは使わず、「ロータンク手洗いなし」便器と併せて、別に手洗器を設けることになります。
水量の確認
我が家のタンクには、電気ポットの水位計のように、透明な塩化ビニールの水位管が付いていまして、車庫側から水位が確認できるようになっており、塩ビ管には、自分で目盛りをマジックでマーキングし、残水量がつかめるようになっています。このタイプは、直射日光が当たると藻が発生しますので注意が必要です。我が家は、車庫の奥の薄暗いところに設置していますので、設置以来藻の発生はありません。水位計は、他に浮子式などもあります。「やってみよう雨水利用」編者グループ・レインドロップス 発行所(株)北斗出版には、絵付で解説されていますので、参考になさってください。
なお、我が家のタンクには電極棒も付いていて、タンクが空に近づくと、ポンプが停止するようになっています。但し、いままで停止するほど、水が少なくなったことはありません。
ポンプの音対策
雨水システムの運用を始めて気づいたのが、ポンプの音です。日中はともかく、夜間は用を足すのをはばるほど音がします。幸い我が家のポンプは車庫の中にあり、夜間は電動シャッターが閉まっていますので、ほとんど音は漏れませんが、エアコンの室外機の音が気になるような、静閑な住宅街だと、ポンプの設置場所・設置方法等についてご近所への配慮が必要なようです。
タンクの掃除
雨水タンクは1〜5年の周期で、水を抜いて掃除をすべきと言われています。これは、初期雨水カットタンク等を設置して、できるだけきれいな水を貯めるよう努力しても、どうしても底に細かい砂などの沈殿物が溜まってしまうからです。我が家はまる3年が経過しましたが、今のところあまり沈殿物がないようなので、掃除は一回も行っていません。
また、時期的な問題もあります。できれば、雨水タンクが空になったときに合わせて掃除をすればいいのでしょうが、我が家は今のところ空になったことがありません。一番少なくなるのは2月頃ですが、この時期は寒いので掃除をしたくないし、一方、掃除がしやすい夏場は、ほぼいつも満タンで、せっかく貯まっている雨水を捨ててしまうのはもったいないしと悩ましいところです。今のところは、5年目位の梅雨に、天気予報で2〜3日後に降雨が期待できる日にやろうかなと考えています。
普段はメインテナンスフリー
ともかく雨さえ降ってくれれば、タンクに水はありますので、何もすることはありません。
網かごへ、当初は心配していた葉っぱなどは殆どたまりませんし(これも、屋根にかかるような大木があるお宅は注意です)、初期雨水カットタンクの水は、底のコックを少しだけ開けていますので、晴天のうちに抜けて、次の降雨に備える準備ができています。
建てた当時は、たびたび雨水タンクの点検口を開けて中を覗いていましたが、今は月に1回程度、異常がないか開けて見るぐらいです。水位計が車庫にありますので、普段は車に乗るときにチラッと水位を確認しておけば十分です。それも、春から秋にかけては、ほぼいつも満タンですので、その確認も不要なくらいです。渇水時期の冬場は残り1tとかになりますが、これまでの利用状況から1日の使用量は分かっていますので、「あと10日はもつな」と計算ができ、無用な心配はなくなりました。大ざっぱにいって、「ダムの水が減って、制限給水の心配がでてくるほどの渇水にならない限り、我が家の雨水タンクも心配ない」ようです。
と、いうわけで、雨水利用と言っても普段は上水道となんら変わらず手間はかかりません。却って、上水道よりも、配管から鉄錆が出ないせいか、トイレがあまり汚れずトイレの掃除が楽なような気がするのですが…。
「雨水利用は面倒くさそう」と思っていらっしゃる方も、心配は無用です。天気が良ければ「OMが効くな」と嬉しくなり、雨が降ればタンクに水が貯まって嬉しくなり、天気が良くても悪くても天の恵みに感謝して気持ちよく暮らしています。
臭い
水の臭いには全然感じません。私は水の専門家ではないのでよくわかりませんが、我が家は地下車庫の一部を区切って雨水タンクとしていますので、水温の変化は少なく、また全くの暗闇ですので、水質としては安定しているようです。例えば、地上設置で直射日光が当たって水温が上がったり、タンクが太陽光線を通すような素材ですと、雑菌が繁殖したり、藻が発生したりしますので「臭い」の問題があるかもしれません。
私は、上水道に含まれる塩素の役割は、安全な飲み水を得るために否定はしませんが、車の塗装や庭の木々・草花には、塩素が含まれていない雨水の方が向いていることは言うまでもないことだと思っています。
停電時の対応
この件に関しては、深刻に感じていません。確率的には非常に低いですし、そのような事態になったら、上水道から(もしくは雨水タンクから直接)バケツで水を汲み、トイレのタンクに水を注ぐのではなく、汚物を直接流せばよいと思っています。それよりも、ポンプの故障、雨水タンクの水漏れなどで、雨水の利用ができない事態が想定されます。心配すればきりがありませんが、ゴムホースとバケツがあれば、なんとかなりそうです。
計画した際の問題点
@雨水タンクが空になったときに、上水道からの補給をどうするか
年間の傾向を見ると、3月中旬から10月頃までは雨が多いので、雨水タンクはいつも満杯に近く、オーバーフロー管から多くの雨水を捨ててしまっていますが、11月から3月中旬までの渇水期は降った雨だけで足りず上水道から補給する必要があります。補給の方法としては、
1. 上水道の蛇口からゴムホースを引いて雨水タンクに手動で注ぎ込む。
2. 雨水タンクが空になると上水道から「電磁弁」を使って自動的に注ぎ込む設備をつける。
方法があります。当然2の方が便利ですが、コストもかかりますし、当市では個人住宅に関して2の方法は許可されておりません(雨水が上水道に逆流する恐れがあるので)。
また、タンク容量とのかねあいもあります。容量が多ければ、それだけ上水を補給する手間は減りますが、大きいタンクは高くなります。小さいと設置費は安くなりますが、上水を補給する手間は増えるわけです。つまり、タンクの適正な大きさがあるわけです。私の場合は過去数年分の月別の降水量のデータをパソコンに打ち込んで解析し、平年の降水量があれば、上水道からの補給がほとんどないようにタンクの大きさを決めました(運用してみたところ、想定よりも実際の使用量が少なかったので、いまのところ雨水だけで足りていますが)。集水面積(屋根の大きさ)、使用量などにより一概に言えませんが、一人1トンが目安のようです。
A使用量をどのように把握するか
公共下水道普及地域ですと、通常は上水道を使った分だけ下水を流すこととして料金が請求されます。雨水を使う場合は、「上水道+雨水」を下水道に流すことになりますので、雨水の使用量を下水道管理者へ報告する必要があります。
我が家の場合は、ポンプから便器へ送る配管の途中にメーターが付いていまして、定期的に(当市の場合は2ヶ月に1回)使用量を当市下水道課へ報告をしています。また、上水道から雨水タンクへ補給した場合は、使用量が二重にカウントされてしまうので、その分は控除する必要があります。ほぼ2年に渡り使用量を測定した結果、月平均3tで安定しており、毎度報告するのは面倒なため、現在は報告せず、3tの使用量で料金を請求していただくよう担当者と協議いたしました。
B自分が主体的に動かないとよい設備はできない。
公共施設に設置するような大規模な雨水利用施設は、専門の会社がありますし、文献も多く、事例が雑誌などで紹介されています。
一方、個人住宅を施工する設備業者ですと、雨水利用施設のノウハウを持っているところはあまりありません。実際我が家を施工した給排水設備工務店も、雨水利用施設の工事は初めてでした。
OMは協会で立派にシステム化され、工務店にお願いすれば全国どこでも素晴らしいものができますが、雨水利用施設に関しては、施工に慣れた工務店が見つかれば万々歳ですが、一般的には自分が主体的に勉強して自分で工事をするか、工務店にお願いする場合は工務店をリードするくらいないと良いものはできません。
実際のところ、書ききれない細かい打ち合わせを数え切れないほど、工務店と行いましたし、初期雨水カット用の小タンクは、適当なものはないかと自分でさんざん探し回って、ホームセンターで「穀物バンク」という農業用の資材を買ってきて、工務店に設備に組み込んでもらいました。
上の@Aの問題も地方によって対応が異なりますので、工務店任せにせず、自分で担当部局と事前に話をしておいたが良いと思われます。
「やってみよう雨水利用」編者グループ・レインドロップス 発行所(株)北斗出版は、一般向きにわかりやすく書いてありますので、おすすめです。
また、インターネットで検索すると、私が設置した頃からすると、最近は個人向けの雨水利用パッケージ製品も多く出回っているようで、このような製品の利用も簡単でいいですね。
ここまで読まれて、大変だなあという感想を持たれたかもしれません。しかし、是非作る工程を楽しんでいただきたいのです。できあがったときの達成感は大きいし、日々雨水を利用することは精神的な満足感が大きいです。
我が家では敷地に余裕がなかったので、雨水タンクからオーバーフローした雨水は直接側溝へ捨てていますが、敷地に余裕があれは「浸透ます」と言って、積極的に余った雨水を地下へ還元する設備を設置できますし、ビオトープへ水を引いて自然に近い環境を楽しむこともできます。どうか、多くの方々が雨水利用に挑戦されることを願ってやみません。
 

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